努力なんかいらない! [コラム]

 話が混乱するといけないので、まず努力を二つに分けて考えてみましょう。

 良い言葉が見つからなくて上手く言えないのですが、何とか理解して下さい。まず一つは、自分が自分自身に対して感じるもの、もう一つは他人が自分自身に対して感じるものです。

 例えば、私が「最近俺は頑張ってるな。」と感じたとします。これは私が私自身に対して感じている努力です。それに対して、ある人が私に対して「お前最近頑張ってるな。」と感じたとします。これは他人が私に対して感じている努力です。私が必要ないと思うのは前者の方、自分が自分自身に感じている努力です。

 では、「自分は努力している。」と感じる時はどういうときでしょうか?勿論、ケース・バイ・ケースで色々な理由が考えられます。しかし、楽器を勉強している人の場合、ある一つのケースが多いような気がします。その一つのケースとは「プレッシャーをかけられた時。」です。

 一番多いのが「これを練習して行かないと叱られる。」というケースです。次に多いのが「これが吹けないと恥をかく。」というケースでしょう。これは発表会やコンクール等の本番を控えた時に多いと思います。これらはある意味では追い詰められた状態です。私はこの状態が必要ないと思うのです。

 日本では習い事をすると「上達する為には厳しさが必要だ。」と言うのが当たり前になっているようです。つまり「努力無しには上達は無い。」と考えられています。その結果「楽しみたい。」と思っている人たちは気持ちのどこかで上達する事を諦めてしまっています。しかし、本当にそうでしょうか?楽しみながら上達は出来ないのでしょうか?

 皆さんは趣味や遊び没頭していたら、アッという間に時間が経っていたとか、気がついたら朝だったと言う経験はありませんか?また、それとは反対に嫌な仕事や勉強をさせられて、時間が経つのが遅く感じたり、時間の割には仕事や勉強がはかどらなかった経験はありませんか?何かでプレッシャーをかけられ、追い詰められた状態でする練習は後者の方に近いものです。嫌な練習は時間が経つのが遅く感じ、練習時間の割には身に付かないものなのです。また、このような精神状態でする練習は体に余計な力が入り、悪い癖が付く事も少なくありません。このような場合は最悪です。練習すればする程下手になっていくのですから、、、。

 「自分はこんなに努力しているのに、全然上手くならない。」「きっと自分には才能がないんだ。」と感じている人の多くがこのような間違いをおかしているのです。また、このような人に限って練習量を「毎日3時間練習している。」とか「この曲は合計100時間ぐらい練習している」とか時間で表現しようとします。

 少なくとも音楽の場合、練習量は時間では表せません。管楽器の場合は、一度に音色、音程、フィンガリング、ブレス、タンギング、という技術的な事を考えながら音楽的な表現もしなければならないので集中力が大切になってくるのです。これは、練習の時から注意していなければ急にはできないものです。嫌々している練習でこの集中力を保つのはまず無理でしょう。また、集中力を欠いた練習は何時間しても、本番等の緊張した状態では約に立ちません。本番に弱い人の多くがこのような集中力を欠いた練習をしているのです。

 せっかく練習するのでしたら練習しただけ上達したいでしょうし、それを本番で生かしたいと考えるでしょう。それにはどうしたら良いのでしょうか?私は次のように考えています。

 まず、しっかりとした目的を持つ事です。「この曲が吹けるようになりたい。」「この人のような音が出したい。」とか「女の子に(男の子に)持てる演奏がしたい。」とか何でも良いのです。しっかりした目的を持つ事です。そして、あまり気乗りがしない時は無理な練習はしないことです。そして何より大切なのは自分にとって楽しい練習の仕方を早く見つける事です。その方法を見つける手助けがこの「サックスなんか難しくない!」という文章で出来ればと私は思っています。

 また、プレッシャーがかかる時にはどうしたら良いのでしょうか?私は少し考え方を変えれば良いと思っています。習っている人の場合、見栄を捨て「自分は下手だから習っているんだ。」と言う事を自分自身に言い聞かせ、それを態度で先生の前で素直に出す事です。そうすれば練習が間に合わなくて叱られても「あぁ、下手だったから仕方ないな。」と納得できるはずです。しかし、この時に注意して下さい。ただ叱るだけで、皆さんが上達するためのアドバイスをしてくれない先生の場合は、先生に問題があるかもしれません。

 ちょっと話がそれてしまいますが、趣味で楽器を習っている人の場合、仕事や勉強で忙しくて練習できない場合が多々あります。それを叱るだけでは先生とは呼べないと思います。練習時間が取れなかった場合「忙しかったらこのような練習をしてきて下さい。」とアドバイスをしてくれるのが先生であり、練習して来たのに上手く吹けなかった場合「ここの練習の仕方が悪かったのですよ。」とか「今度はこの練習をして来て下さい。」と次のアドバイスをくれるのが先生だと私は思います。

 話を戻しましょう。発表会やコンクール等の本番の時は「上手く出来なかったらどうしよう。」とか、「良い演奏をしてやろう。」と考えるのではなく、「この演奏でどこまで、自分の力が出せるか試してみよう。」くらいの気持ちで良いと思います。もし、ミスったら自分の力が発揮できなかったのです。勉強中なのですから恥でも何でもありません。また、練習して次の本番で自分の力を試せば良いのです。

 長々と書きましたが、私が言いたい事は、「怒られたくない。」とか「恥をかきたくない。」と言うマイナスの気持ちで練習した時と「誉められたい。」とか「自分が気持ちよく吹きたい。」と言うプラスの気持ちで練習した時とではどちらが効果的かと言う事なのです。また、自分が今どちらの状態で練習しているか判断するために努力を2つに分けて考えてみたのです。自分が努力していると思っている時の多くがマイナスの気持ちの場合が多く、自分にはその気がないのに他人は努力していると思っている場合はプラスの気持ちの場合が多いと思うのです。

 ですから、「厳しさとか努力とか考えずに、自分の目的に向かう事を楽しんでいる時が一番良い時なのではないですか?」「上達するためには努力なんて意識しない方がよいのではないですか?」つまり「努力なんかいらない。」ということです。
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