イメージ・トレーニング [コラム]

 突然ですが、皆さんは頭の中で1曲丸ごと思い浮かべることが出来る曲は何曲位ありますか?伴奏も思い浮かべられれば完璧ですが、そこまでは難しいので、メロディーにイントロ、エンディング、間奏を含めて思い浮かべられる曲で構いません。数えてみると以外と少なくありませんか?曲を早く、確実に仕上げるには曲のイメージを自分の頭の中にしっかりと作っておく事はとても大切な事です。しかし、これがしっかりと出来ていない方は非常に多く、それが原因で伸び悩んでいる方も少なくありません。そこで、今回は自分の頭の中に曲のイメージを作る事の大切さ、その方法についてお話しようと思います。

 例えば、始めて行く(叉は殆ど道を覚えていない)場所に、地図を見ながら行く場合と、良く道を知っている場所に行く場合とでは、どちらが運転に集中し易いでしょうか?地図を見ている時はそちらに気が取られますし、道を捜している時はそちらに気を取られます。これは、どう考えても良く道を知っている場所に行く場合の方が運転に集中し易い筈です。これと同様の事が演奏にも言えるのです。つまり、良く知らない曲を楽譜を頼りに演奏するよりも、良く知っている上に(しっかりと)暗譜している曲の方が、演奏に集中できるのです。勿論、慣れ過ぎて集中力がなくなるタイプの人も居るでしょうし、暗譜が中途半端だと思い出す事に気が行ってしまい、逆に演奏に集中出来ない事もあるでしょうが、これは、初見の曲を譜面を頼りに演奏するのと違い、一人々々気をつけて工夫すれば克服出来る筈です。

 また、ちょっと努力して、道を覚える時に地図を見て周りの道の構造を覚えておけば、いつも使っている道が事故や工事等で使えなかった時に慌てる事なく脇道を使って目的地に辿り着く事が出来ますし、時間ごとの込み具合等も一緒に覚えておくとその時間々々で適格に道を選ぶ事が出来る筈です。これと同様の事も演奏にも言えます。自分のメロディーと一緒にイントロ、エンディング、間奏は勿論、伴奏も覚えておくのです。そして、ちょっと努力して曲の構成、和声の進行等も覚えておけば、本番中に(必ずと言って良い程)起こるミスやトラブルに適格に対処する事が出来、音楽を壊す事なく乗り切る事が出来る様になります。プロの演奏会でもミスやトラブルはあります。しかし、その多くが観客に気付かれる事はありません。これは、プロの場合、ミスやトラブルがあっても、音楽を壊さない為の準備と努力をしているからです。「プロはミスをしてはいけない。」と言う人もいるでしょうが、この事の是非は機会があればお話しましょう。

 では、話を戻します。「曲を練習する場合は曲を何度も聴いて覚えた方が良いですよ。」とか「この曲は3ケ所の部分で同じ伴奏(叉は同じコード)が使われているので、同じメロディーを3回演奏しても良いですよ。」と言うような話をすると「私はもう歳なので記憶力には自信がありません。」とか「曲の構成だとか、和声の進行だとか、難しい事は解りません。」と言う返事が必ず返ってきます。確かに、これらを理論的に、しかも自分一人の力だけで行うのは相当大変な事です。そこで、機械や先生(叉は吹ける人)を利用するのです。

 まず、曲を練習する場合、その曲を演奏したものを探すのです。CDがあれば一番良いのですが、CDが無い場合は先生に演奏してもらい録音しておきます。また、レッスンの教材になっている曲の場合、殆どの曲にCDやMIDIデータが用意されているはずです。これを手に入れて録音しても構いません。MIDIデータでしたら、根気よくホームページを探して見ると、お目当ての曲が見つかる場合がありますし、音楽の事は良く分からなくても、楽譜通りに譜面を移して行く(打ち込む)と、それを曲として演奏してくれるソフト(Band_In_A_Box、ミュージ郎等)もありますので、自分で作ってみても構いません。とにかく、演奏を手に入れ、それを暇があれば聴いて覚えるのです。カセット・テープやMDに録音して通勤、通学の間にウオークマンで聴いても構いませんし、家事の間流しておいても構いません。移動中に自動車の中で聴いているという生徒さんもいます。これだけで練習の効率は随分と良くなります。この時に、同じ曲でも違う演奏を出来るだけ沢山探して、それを覚えると更に効率が上がりますし、自分なりの曲のイメージを作るのにも、本番に強くなる為にも良い結果が得られます。これは、先程の例で言うと、同じ目的地に行くのに出来るだけ沢山の道を覚えるのと同じ事になります。

 曲を覚え、ある程度吹けるようになったら、暗譜します。暗譜するとは言っても全曲を丸ごと覚える必要はありません。初めに、先生に曲を2~4小節位の短いフレーズに分けてもらい、1番目のフレーズを覚えたら次は2番目のフレーズと言う様に、それぞれのフレーズを覚えて行きます。2番目のフレーズを覚えている時に1番目のフレーズは忘れてしまっても構いません。この時に覚え辛いフレーズは本番に間違えやすいところですので、特に練習しておきます。曲を練習する時、初めからこのように暗譜しながらするのも良い方法だと思います。

 次に、一度暗譜したフレーズと楽譜を関連付けします。つまり、各フレーズの初めの音符を見れば、そのフレーズの後の部分は見ないでも吹けるようにするのです。慣れてくると、音符を見なくても楽譜を眺めるだけで、フレーズを思い出せるようになってきます。このような暗譜でしたら、少し練習すれば誰にでもできるようになります。

 そして、曲の構成です。これは完全に先生に頼ってしまいましょう。詳しく説明するとそれだけで、1つのコーナーになってしまうので、ここでは簡単に述べますが、曲の構成を表すのに、フレーズ毎にアルファベットで名前を付け、その組み合わせで構成を表す方法が一般的です。例えば「枯葉」の構成を同様にして表すと「a-a-b-c」と4つの部分に分ける事が出来ます。しかしフレーズは「a b c」の3種類です。曲によっては「a-a-b-a」と2つのフレーズで構成されている曲も少なくありません。初めは「何となく。」で構いませんから、これも頭の角の方に置くようにしておいて下さい。曲のイメージを作ったり、暗譜する際役に立つ日がきっと来ます。

 このような練習を続けていく事で、曲を暗譜するコツが解るようになりますし、自分が演奏する場所ばかりに気を取られるのでは無く、曲全体の構成を考えながら演奏する事ができるようになります。そして、曲のイメージを頭の中に創り、それを実際の音にする為の準備ができる訳です。
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