草野球のような音楽 [コラム]

 日本での歴史が長い野球は、現在では様々な楽しみ方がされています。それを(野球に関しては素人の私が)大雑把に分けると次の4つに分ける事が出来ると思います。

プロ野球   社会人野球   学生野球   草野球
 プロ野球は、野球を仕事としている人達によって行われるものです。当然、技術的にも最高のレベルを要求されます。収入も野球によって得る事が出来ますし、トレーニングしている間も報酬が支払われます。それに対し、社会人野球の場合、野球を仕事としている訳ではないので、収入は野球以外の物で得る事になりますし、トレーニング等も(基本的には)仕事以外の場所で、自分の責任で行わなければなりません。しかし、技術的にはプロ野球と同等のレベルを要求される場合もあります。

 学生野球は、その名の通り、学生によって行われるものです。これには先生の考え方や学校の方針によって様々なスタイルがあります。生徒に野球の楽しさを教える事が目的のもの、勝つ事が目的のもの、優秀な選手を育てる事が目的のもの等々、、、。少し違いますが、リトル・リーグもここに入れて良いと思います。

 そして、草野球です。これは野球が好きな人達が集まり、それぞれのスタイルで野球を楽しむものです。レベルも元プロ野球の選手や、国体の代表選手等から、グローブの付け方やバットの持ち方も良く解らない人まで様々です。結果よりも野球そのものを楽しむ方が多いのも草野球の特徴でしょう。

 日本の音楽を同様に分けると社会人野球にあたるものと、学生野球にあたるものの2つになってしまうような気がします。

 例えば、音楽で生計を立てている人の場合、その多くが演奏家や講師として収入を得ています。演奏家とは言っても日本で要求される演奏は、与えられた楽譜を流れ作業の様に機械的に演奏するものであったり、レパートリーとして持っている曲を何回も同じように演奏するものであったりするのが殆どです。ここには新しい技術の拾得や創作活動等は必要ありません。ですから、当然それら(新しい技術の拾得や創作活動等)の活動には報酬が出ません。つまり、日本ではプロとしての音楽活動では生活が出来ないのです。これが優秀な音楽家が海外に出て行ってしまう大きな原因にもなっています。

 また、講師の仕事は音楽家の仕事とは別の能力を要求されます。音楽家でなければ出来ない仕事だけれども、音楽家の仕事とは別のものだと考えて良いと思います。結果として、日本で音楽家として生活する為には音楽以外の仕事で収入を得、その収入で音楽活動を続けなければなりません。野球で言えば社会人野球と同じになります。日本では多くの音楽家が「社会人音楽家」だと言う事になります。

 学生の音楽は野球と殆ど同じと考えて良いと思います。違う点と言えば(野球に限らず)スポーツ関係の多くの指導者が、怪我を防止したり、子供の運動能力を高める為の専門的な知識を持って行るのに対し、音楽関係の指導者の多くがこれらに関する知識に乏しいと言う事でしょうか。その結果、無理な奏法で必要以上に長い時間練習させられ、体を傷めてしまっている子供が少なくありません。これらの多くが「コンクールで勝つ為。」と言う名目で行われているのが、とても残念でなりません。

 以前、リトル・リーグに関する記事で「リトル・リーグで変化球禁止。」と言うような内容のものを読んだ事があります。「レベルが上がってきたリトル・リーグで試合に勝つ為にピッチャーに変化球を投げさせる指導者が増えているが、身体の出来上がっていない成長期の子供に変化球を投げさせると、肩や肘を傷める事が多く、子供の野球生命を絶つ事にもなりかねない。」「多くの専門家が各チームの指導者に呼び掛けたが、一向になくならない。」「この際、ルールで禁止すべきではないか。」と言うような内容だったと思います。この記事の真偽の程は私には解りませんし、その後どうなったのかも知りません。ただ、一部の吹奏楽の指導者が同じような過ちを犯してます。私も機会があれば話をするようにはしているのですが、いつも答えは同じ「コンクールで勝つ為には仕方ありません。」です。何んとかならないものでしょうか?

 社会人音楽家でも音楽が出来、生活が出来るだけ私は幸せなのでしょうが、プロの音楽家としても生活が出来るような社会をつくる為の活動も行っていきたいと考えています。しかし、教育現場の事に関しては私一人ではどうする事もできません。残念ですが「勝つ事。」でしか音楽性を評価できない人達が多い間は変わらないでしょう。これらは、音楽を職業としている人達が少しずつ改善していかなければならないことです。しかし、音楽が好きで、音楽を趣味とする人達が力を合わせれば出来ることがあります。それが、草野球のような音楽です。

 ここでは難しい事は言いません。音楽好きが集まったらとにかく演奏してしまいましょう。下手でも良いのです。その時は下手な演奏を楽しんでしまいましょう。上手い人は引き立て役に回るくらいの気持ちを持てば良いのです。たまたま、上手い人が集まった時、真剣勝負をしてみれば良いのです。草野球チームの中には9人揃っておらず、試合の度にメンバー集めをするようなチームだってあります。一度も勝った事がないようなチームだってあります。それでも野球が好きで、野球が楽しくて続けている人達は沢山いるのです。反対に、草野球チームにもプロ並の力を持った人はいます。私が中学校の教師をしていた時、学校間の親睦と言う事で何回か野球の試合をした事があります。我がチームのピッチャーは野球を専門にしていた体育の先生です。試しにバッター・ボックスに立ってみましたが、球の速さに驚き、ど真ん中のボールで逃げてしまいました。打つ所の話ではありません。

 この先生は、相手が野球が出来ると分かると全力で投げます。ところが、人数集めで野球を良く知らないのに駆り出された女の先生等がバッター・ボックスに立つと下から投げて打たせてあげるのです。皆に楽しんでもらう為に、これ以外にも様々な心づかいをしていました。その時私は「この人は野球の楽しみ方を知っている人なんだなー。」と感心したものです。野球が出来る人は力と力の真剣勝負が楽しいのです。出来ない人は打てれば楽しいのです。このような時に「どちらが正しい野球の楽しみ方か。」等と言う議論は全く意味がありません。もし、この先生が野球を良く知らないバッターに「これが野球だ!」等と言って、全力で投げたらどうでしょう?その場はシラケてしまうでしょうし、バッター・ボックスに立っていた人は「自分には野球なんか出来ない。」と考えてしまうでしょう。そして、楽しみも勝敗だけになってしまうでしょう。このような場面では、それぞれが自由に野球を楽しめば良いのですし、色々な楽しみ方を知っている人は、皆の楽しみ方に合わせてあげれば良いのです。私自身もこの時の試合の勝敗は覚えていませんが、楽しかったシーンはしっかりと覚えています。

 音楽の場合は「何が正しい音楽の楽しみ方か。」という議論が多すぎるような気がします。その結果、音楽に興味があり、これから何か楽器をやってみようと考えている人達に必要以上のプレッシャーをかけてしまっているかもしれません。草野球のように、それぞれが自由に演奏を楽しみ、色々な音楽の楽しみ方を知っている人は、皆の楽しみ方に合わせて一緒に演奏を楽しむような楽しみ方があっても良いと思います。これが、私の言う「草野球のような音楽」です。何か名前を付けようと思ったのですが、中々良い言葉が浮びません。良い名前が浮んだ方は是非ご連絡下さい。

 皆で力を合わせて、草野球のような音楽の楽しみ方も開拓してみましょう!
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