半年計画 [コラム]

 運動能力を向上させ、技術を向上させるには、ある程度の継続的な練習と期間が必要になります。勿論、必要な期間にも個人差があります。全く経験がない運動能力を身に付ける為には時間が多く必要になりますし、以前似た様な運動をした経験がある場合は短い時間で身に付ける事ができます。つまり、以前ピアノ等を演奏していた事がある方は、Saxの為のフィンガー・トレーニングに必要な時間は短くなりますし、全ての指を別々に動かした事がない方がSaxの為のフィンガー・トレーニングをするとなると長い時間が必要になります。

 私の友人の医者、体育の先生等と話をしたところ、長くても半年も見ておけば運動能力を向上させる事ができる様です。私の経験からも同様の事を感じています。ただ、勘違いしないで下さい。これは半年で急にプロ並に演奏できると言う事ではありません。「技術をワン・ステップ向上させるには半年位見ておけば大丈夫でしょう。」と言うことです。「ワン・ステップとはどれくらい?」と質問が出そうですが、残念ながら私の文章能力では上手く表現する事ができません。今回は「ここは10回に1回は上手く吹ける。」と言うところが「ここならいつでも上手く吹ける。」となる事を、「技術がワン・ステップ向上した。」と考えて見て下さい。

 練習、と言われて頭に浮ぶのは「教則本を買って練習曲やスケール等を順番に練習して行く。」と言うものと「曲を決めて1曲々々仕上げていく。」と言うのが多いのではないでしょうか。先生に付いてレッスンを受けている方も、独学で勉強している方もこれに関しては同様だと思います。この方法は効率の面からも確実性の面からも良い方法だと思いますし、練習する側にしてみても自分の練習度合いが分かりやすく良い方法だと思います。ただ、この練習方法は運動能力のバランスを取る為(指とタンギングを合わせる等)にはとても効果があるのですが、運動能力を向上させるにはあまり効率が良い方法とは言えないのです。そこで、今回の半年計画の登場です。

 自分が特に劣っていると思う技術を半年先を目標にして一つ々々練習し克服していくのです。小指で思うようにキーを押せない人はその為の練習を、タンギングが遅い人は速いタンギングの練習を、高い(低い)音が上手く出ない人はその為の練習を今までの練習に追加するのです。

 例えば、苦手な人が多い小指の練習を例に考えてみましょう。小指の練習というとやはりフィンガー・トレーニングが思い浮かぶでしょう。しかし、力任せに練習しても何にもなりません。このような練習では指のフォームを崩し、アンブシュアを壊し、指を傷めてしまう事が少なくありません。これは、すぐに効果を出したいと考えるからでしょうが、フォームを崩し、指を傷めてしまえばそれを治す必要が出てくるのです。それでは結果的に時間がかかってしまいます。ですから、初めからゆっくりと時間をかけてトレーニングした方が良いと思うのです。

 初めは、小指で押さえなければならないキーを綺麗な指の形で、力を抜いて正確に触る所から始めるのです。勿論、音など出す必要はありません。これなら、音が出せない深夜にだってできますし、工夫すれば楽器がなくても練習する事ができます。もし、毎日練習できれば(疲れたら必ず休んで下さい。)1ヶ月程で小指がしっかりしてくるはずです。そうしたら、指に無理な力を入れない程度に軽くキーを押して練習してみます。その時に鏡などで指の形が崩れていないかを確認すると良いでしょう。この練習を2~3ヶ月続ければ、無理に力を入れなくてもしっかりとキーを押す事が出来るようになると思います。勿論、ここで上げた期間は一つの目安です。自分のペースでのんびりと練習をして下さい。そして、しっかりとキーを押す事が出来るようになってから、音を出してフィンガー・トレーニングをするのです。早ければ、3~4ヶ月である程度吹けるようになるでしょう。ですから、初めから半年のつもりで練習していれば、十分余裕があります。

 速いタンギングやフィンガー・トレーニングをする場合は相反する2つの練習を根気良く続けてみると良いでしょう。私が学生の頃は、「メトロノームを使って初めはゆっくり正確に、吹けるようになったらメトロノームのテンポを少しずつ上げて、練習しなさい。」「そうすればいつかは速いテンポで吹けるようになる。」と言われたものです。しかし、実際はこれではいくら練習しても、速いテンポでは吹けるようにならないのです。これは人間の体の構造に関係あります。専門書を読むと色々と難しい事が書いてありますが、簡単に言うと速い動きをする筋肉と遅い動きをする筋肉、速い動きをコントロールする脳と、遅い動きをコントロールする脳は違うと言う事です。つまり、ゆっくり練習しているときは遅い動きをする筋肉しかトレーニングできていませんし、遅い動きをコントロールする脳しか使っていません。これでは、いくら練習しても速い動きが出来るようにはなりません。速い動きを練習する為には速いテンポで練習するしかないのです。

 そこでまず、ゆっくりと正確にタンギングやフィンガー・トレーニングをすることで綺麗なフォームを作り、力を抜く方法を練習します。次に速いテンポの練習で体や頭を速いテンポに慣らしていくのです。初めはデタラメでも滅茶苦茶でも構いませんから、初めからある程度速いテンポで練習するのです。それで、余計な力が入ったりフォームが崩れてきたら、ゆっくり正確に練習して直せば良いのです。フォームが良くなり余計な力が抜けたら、また速いテンポで練習するのです。これを半年位普段の練習に付け加えてみるのです。そうすると、速いテンポの中で、自分の体や頭がコントロール出来るようになってきます。つまり、相反する2つの練習が1つにまとまって行く訳です。

 この他にも、スポーツのトレーニング方法を参考にし、相反するトレーニングを上手く組み合わせる事で、色々な練習が考えられるはずです。また、半年先に目標を置く事で無理をする必要もありません。つまり、無理な努力をする必要もありませんし、疲れたら休む余裕も十分あるのです。そして、この練習は普段の練習に付け加える(サブの練習)訳ですから、目に見えて成果が上がらなくてもそれ程焦る必要もありません。気が付きましたか?今までの文章が殆ど関係しているのです。

 試しに、これから半年先に目標を置いた練習を付け加えて見ませんか?
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。