まぐれから始めよう! [コラム]

 皆さんの中で「自分には速いテンポの曲は絶対に吹けない。」と諦めている方はいませんか?私の経験では、この傾向は真面目に練習を重ねて来た方の方が強い様です。速いテンポの曲が苦手な方の多くが、この真面目さが災いしているかもしれません。

 私が楽器を始めた頃は「まず、メトロノームを使ってゆっくり正確に練習しなさい。」「正確に吹けるようになったら、メトロノームのメモリを1つ上げて(少し速くして)練習しなさい。」「これを根気よく続けていれば、いつかは速いテンポの曲が吹けるようになる。」と言われたものです。つまり、「初めはゆっくりでも、毎日少しずつテンポを上げて行けば最後には速いテンポで吹けるようになりますよ。」と言う訳です。これはとても説得力がありましたし、初めは毎日々々指が速く動くくようになって行くのも実感でき、この練習方法を疑いませんでした。ところが、ある速さ迄行くと、いくら練習してもそれ以上指が速く動くようにはなりません。他の曲でもやはり同じ速さ迄来るとそれ以上は指が速く動くようにはならないのです。一時は「これが自分の限界なのかな。」と諦めました。しかし、実はこの練習には大きな落とし穴があるのです。

 筋肉には瞬発的な動作に向いたものと、持続的な動作に向いたものがあるそうです。単純に言うと、速いテンポの曲を吹く時には瞬発的な動作に向いた筋肉を使いますし、遅いテンポの曲を吹く時には持続的な動作に向いた筋肉を使います。つまり、使う筋肉が違うのです。先程の練習でトレーニングしていたのは、遅い動きに向いた筋肉だった訳です。ですから、その筋肉の出せる速さの限界が来ればそれ以上テンポを上げて演奏できないのは当然のことなのです。しかし、これはまだその人が最も速く吹ける速さの限界ではありません。先程の練習では速い動きに向かない筋肉を使っていた訳です。速い動きに適した筋肉を使ってトレーニングをすれば誰でもそれ以上のテンポで吹けるはずです。この速い動きに向いた筋肉を使って演奏できる速さの限界が、その人が最も速く吹ける速さの限界なのです。私の経験では、遅い動きに適した筋肉で吹ける速さの限界は、4分音符=100~120の速さで16分音符を吹いたくらいの速さの様です。勿論、個人差はあると思いますが、これだけでも随分速いテンポです。ですから、速い動きに適した筋肉を使えばもっと速いテンポで吹くことはできますし、先程のテンポ(4分音符=100~120の速さで16分音符を吹いたくらいの速さ)でしたら、余裕を持って吹くことができます。では、速い動きに適した筋肉をトレーニングするにはどうしたら良いでしょうか?これは「筋肉をだます(?)。」のが一番の様です。

 あるテレビ番組でバスケット・ボールの選手のジャンプ力を伸ばすトレーニングを見た事があります。まず左右の肩に1本ずつゴムひもを付けます。そしてそのゴムひものもう一方の端を地面に固定します。これでジャンプをするとゴムひもに引っ張られいつものようにジャンプすることはできません。これで練習すれば筋肉は付きますが、瞬発力を付ける為には更にもう一工夫が必要です。このゴムひもにはフックが付けられており、横にいるコーチがフックに付けられたひもを引っ張るとゴムひもが選手の肩からはずれる様になっているのです。練習方法は簡単です。選手は3回ジャンプをします。そしてコーチは3回目にひもを引き選手の肩からゴムひもをはずします。すると、3回目のジャンプする高さは、いつもよりも高くなるのです。この後すぐにジャンプしてもその高さはいつもの高さに戻ってしまいます。つまり、この3回目のジャンプの高さは偶然にしか過ぎないのです。しかし、この練習を続けていくと、偶然が偶然ではなくなってくるのです。その時のトレーナーは「筋肉が高いジャンプを覚えていく。」と言うような表現をしていました。

 持久力を鍛えるにはコツコツと練習を積む必要がありますが、瞬発力を鍛えるには偶然の積み重ねが必要なのです。具体的な練習方法に関しては(1冊の教則本になってしまう程内容なので)ここでは述べませんが、少なくとも速いテンポの曲は速いテンポで練習する必要があると言うことです。そのテンポは「まぐれだったら吹けるかもしれない。」と言う速さに設定しましょう。100回に1回しか出来なければまぐれですが、10回に1回出来ればまぐれとは呼べなくなってきます。オリックスのイチロー選手だって4割は打てないのですから、2回に1回(5割)の確率で吹ければ実力と考えて良いと思います。つまり、瞬発力を鍛えるにはまぐれの確率を上げていくと言う練習方法が適しています。そして、先程のバスケット・ボールの選手の例のようにまぐれ(偶然)も練習の工夫で意図的に起こすことが出来るのです。くり返しますが、これに関しては教則本にまとめるか、講習会等でレッスンする等しないと説明は難しいので、ここで申し上げられなくて申し訳ありません。フィンガー・トレーニングの時にリズムの工夫をするのも一つの方法です。

 1冊の本でも足りない様な内容をこの短い駄文にまとめようとしたものですから、説明が足りない部分が沢山あります。瞬発力のトレーニングに関してはプロ・スポーツのトレーナーの方が書いた良い本が何冊も出ていますので、自分に解り易い物を1冊くらい読んでみてはいかがでしょうか。そして、まぐれを積極的に使ってみましょう。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

Sax教習所年間スケジュールを作ろう ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。