サックスでエステ [コラム]

 ここでの話は高校生の女の子から聞いた話が元になっています。彼女は「中学生の時少し吹いていたのですが、もう一度基礎から練習したいと。」レッスンを受けにきました。

 初めにアンブシュアの矯正です。シングル・リードの楽器(クラリネット、サックス等)を独学で勉強した方の多くがアンブシュアに癖を持っています。その中で最も多いのが「噛み付き型」のアンブシュアです。標準のマウスピースに厚めのリード(3半以上)を付けて、噛み付くようにくわえ力任せに吹くのがそれです。この吹き方の場合、音程、音色のコントロールが上手く出来ず、タンギングや音の立ち上がり(アインザッツ)が遅くなります。それよりも、一番心配なのが健康面です。

 「噛み付き型」のアンブシュアで吹いている方は、唇、歯、顎に絶えず負担をかけている事になります。唇にはリードをコントロールする為に必要な神経が沢山あります。唇を切った時にその神経までも切ってしまったらリードのコントロールが出来なくなってしまいます。歯に絶えず圧力をかけていると歯の噛み合わせが悪くなったり、歯茎にトラブルを起こしやすくなります。そして、最も多いのが顎関節症です。「噛み付き型」のアンブシュアが顎にかける負担は相当な物なのです。どの場合もひどくなると2度と楽器は吹けなくなってしまいます。これとは別に、肺に穴が空く(病名を忘れてしまいました)子供も増えているようです。
 彼女のも典型的な「噛み付き型」のアンブシュアで、リードはプロでも特別な時にしか使わない厚さの4(信じられない事に学校で使うように言われたそうです)を使っていました。唇はすぐに切れるそうでいつも歯には紙を巻いていました。そこで「そのままの吹き方だと唇にある大切な神経を切ってしまうよ。」「紙を巻かなくても痛くない正しいアンブシュアを身に付けようね。」「リードも標準の物(2半)を使おう。」「それから、そんな吹き方をしていると顎関節症になって楽器が吹けなくなっちゃうよ。」と言うと「実は今顎関節症の治療で病院に通っているのです。」と返事が返ってきました。もう、選択の余地はありません。 まず、アンブシュアの矯正をする事にしました。アンブシュアの矯正については「ワン・ポイント・レッスン」を見て下さい。

 彼女の場合既に顎を痛めているわけですので、ただ矯正をするだけでは楽器を吹く事に不安が残ります。顎の筋肉を鍛え、筋肉のギブスで顎を守る事にしました。そのトレーニングをしている時です。彼女が「これ、可愛い笑顔を作る体操と同じですね。」と言い出したのです。笑顔が可愛くなるかは分かりませんが、正しい吹き方で練習していると顔のぜい肉がとれ、引き締まってくるのは私も経験していました。少なくとも顔やせの効果はありそうです。

 アンブシュアの次はブレスです。「噛み付き型」のアンブシュアの方は、いつも狭いフェイジング(マウスピースとリードの隙間)で吹いている訳です。この場合楽器の中に余り息が入って行きません。つまり、息が必要ないのです。そんな吹き方をしている間にブレスが弱く(鍛えられなく)なってしまいます。逆にブレスが弱い方も「噛み付き型」のアンブシュアになりやすい様です。折角アンブシュアを矯正してもブレスが弱いせいでまた「噛み付き型」のアンブシュアに戻ってしまっては困るので、ブレス・トレーニングも平行して行いました。すると「あ〜、これウエストを細くする体操と同じだ〜。」と大喜びです。楽器の呼吸法がヨガの呼吸法と似ていると言う話は聞いた事はありましたが、ウエストを細くする効果があるとは思いませんでした。確かに、私は40歳過ぎている割には腹は出ていません。同業者(演奏家)を見ても腹が出ている者は殆どいません。これも効果がありそうです。そして、ブレスをコントロールし易くする為に胸の使い方を教えると「あ〜、これはバスト・アップの体操だ〜。」と益々大騒ぎです。

 しっかりしたブレスを支える為に、立ち方を指示すると「あ〜、これはヒップ・アップの体操と同じだ〜」「それに、太ももも締まりそう。」またも大はしゃぎです。使っている筋肉を考えるとヒップ・アップと太ももを引き締める効果も十分ありそうです。正しい奏法を身に付ける事はエステにもつながるかもしれません。

 考えてみると効果があるのはエステばかりでは無さそうです。私は子供の頃小児ぜんそくと診断され、治療を受けていました。ところが楽器を始めてから(高校生の頃から)治療はおろか発作も起きていません。ぜんそくの子供を3人教えた事がありますが、2人は私同様ぜんそくの発作が出なくなった様です。本当は3人とも私が教えている時は収まったのですが、1人は事情があり他の先生にレッスンを受ける事になり、奏法を変えられ、また発作が起こる様になったそうです。

 指を動かす事でボケ防止にも良さそうです。指もきれいになるのではないでしょうか?「噛み付き型」のアンブシュアでは唇が腫れてしまいますが、正しい吹き方は唇を引き締めます。また、エステだけでなく健康にも良いかもしれません。但し、これは正しい奏法で演奏した場合の話です。私が「楽器を吹きたい。」と言った時、父が「結核になるから止めなさい。」と言っていました。実際昔は多かった様です。しかしそれは吹き方が間違っていたのと当時の栄養状態があまり良くなかったのが原因の様で、このような事は今では殆どありませんが、間違った奏法で練習を続けると重大なトラブルを起こす可能性は(今でも)十分考えられます。

 私は経験と素人の知識だけで結論を出しているので、不安もありますが、正しい奏法で楽器を吹く事は健康にも良いし、エステにもつながると思っています。反対に間違った吹き方の中には取り返しの付かない怪我や病気を引き起こしてしまうものもあります。専門の知識をお持ちの方がもっと研究してインストラクターを養成し、「サックス・エステ」を作ったら面白いかもしれません。痩せながらサックスが上手になるのですから、女性に大人気、そうなれば商売としても・・・・取らぬたぬきの皮算用でした。

 冗談(皮算用)はともかく楽器を教える方々もスポーツ同様に、トレーニング方法、健康管理等をもっときちんと勉強し、楽器を楽しんでいる方々を必要のない怪我や病気から守ってあげて欲しいと思います。正直な気持ち、楽器に関しては全くの素人が学校の都合で顧問になり、厳しさだけで子供を指導する様な吹奏楽部は無くして欲しいと思っています。楽器演奏もスポーツ同様「指導の仕方によっては大きな怪我につながる危険性を持っている。」と言う事を認識して欲しいと思います。少なくとも、専門の知識を持った指導者が定期的に(子供だけでなく)顧問の先生も指導できる様なシステムを早く作って欲しいと思っています。正しい奏法を身に付け、効率良く上達した上に、健康になり、エステにもつながれば一石二鳥(三鳥?)です。沢山の方が正しい奏法に興味を持ってくれるのであれば「サックス・エステ」も悪くないかもしれません。
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